先日、季節外れのノロウイルスに感染しました。
病院勤めをしているので、ある程度、基礎的な知識はあったものの、実際に感染して初めてわかったことがたくさんありました。
症状の流れと、タイミングに応じた水分や栄養の摂り方について、体験から学んだことをまとめておきます。
なお、文中にも注釈を入れているように、基礎疾患のある方などは必ずかかりつけ医(または救急担当医)に対処方法をお尋ねください。
下痢の治し方は? 胃薬や下痢止めなどの薬を使ってもいい?
ノロウイルスの下痢や嘔吐って、本当に激しいんです。
勤務先で見慣れているはずの私でも、「おぉ~~~」と思うほどの量と頻度(回数)でした。
他人事みたいに言ってるけど、しんどかったよね・・・。
その勢いといったら、マーライオンも真っ青。
体力を消耗するので、下痢止めや吐き気止めを使いたくなる気持ちはわかります。
でも、下痢止めや胃薬、吐き気止めなどの薬は、決して自己判断で使ってはなりません。
なぜかというと、下痢や嘔吐は、ウイルスを体から出そうとする働きだからです。ウイルスの排出がある程度 進めば、自然に治まります。
つまり、下痢止めや吐き気止めを下手に使うと、かえって症状を長引かせることもあるということです。
逆説的ながら、症状が治まりかけたころには医師の判断で使うことがありますが、素人判断で服薬するのは絶対にやめましょう。
症状の治し方と気をつけること
気をつけることは主に2つ。
- 脱水症状
- 嘔吐による窒息
順番にお話ししますね。
脱水症状に注意すること
ノロウイルスに対する直接の治療薬はありません。
ウイルスが体から出ていけば症状が治まり、自然に治癒していくので、脱水症状を防ぐことが先決です。
特に小さな子どもや高齢者は脱水に弱いので、嘔吐や下痢が始まったら即座に対応を。これはノロウイルスに限ったことではありませんが。
嘔吐と下痢で、相当な量の水分が失われるため、補う必要があるのです。
覚えておいてほしいのは、水分だけでなく電解質(カリウム・ナトリウム・塩素など)が体から出てしまうということ。
水分や電解質が多量に失われると、▼このような電解質異常の症状が出てきます。
- 脱力感
- 倦怠感
- 手足のしびれ
▼脱水症状も。
- 口の渇き
- 皮膚の乾燥
- 尿量の減少
- 体重の減少
重症になると衰弱し、意識障害を起こすこともあります。
小さい子どもやお年寄りは症状を感じにくく、自分の体の状態を的確に訴えられない場合があります。
他人からも見てわかる、▼こんな症状・兆候がないかどうか、注意深く観察してください。
- なんだかぐったりしている
- 生返事しかしない
- 生あくびをしている
嘔吐による窒息の予防を
健康な大人は、吐き気を感じると自然に目が覚めることが多いのですが、小さい子どもやお年寄りは、朦朧(もうろう)として起きられないこともあります。
ふと目を離したスキに吐いていた・・・ということもあるので、吐いてしまったとき気道をふさがないよう、横向けに寝かせておくことも大事です。
嘔吐後はさらなる脱水予防を
嘔吐後は電解質を加えた水分を補給しなければなりません。
ただし、吐き気が強く、なかなか受けつけないときは、しばらく何も飲まず、胃を空っぽにするほうがよいでしょう。
上記のリスク管理ができたら、次は自然治癒を後押しするための対処方法です。
口から水分が摂れるなら、
- OS-1(経口補水液)
- スポーツドリンク
を少しずつ飲みましょう。
これが実は、思っている以上に少しずつしか入らなかったりします。
[tip]口の中を湿らせるだけ ⇒ スプーン1さじ ⇒ 1口 ⇒ 3口・・・[/tip]思っているよりも、ずっと小分けにするのがコツ。
いっぺんにお腹に入れると、胃がチャポチャポして、いつまでも吸収しない感じがするんです。
それがまた負担になったり、吐き気につながったりするので、少量をこまめに摂りましょう。
OS-1(経口補水液)やスポーツドリンクがない場合は、水と塩と砂糖で作ることができます。
覚えておきたいね。
スポーツドリンクの代わりになる吸収のよい水の作り方
【吸収のよい水の作り方】
https://www.forth.go.jp/useful/attention/21.html(厚生労働省検疫所HP)
水1リットル+食塩ティースプーン1杯+砂糖ティースプーン6杯
なお、以下のような方は、むやみに経口補水液を飲むとトラブルを起こすことがあるので、かかりつけ医などに相談してから飲むようにしましょう。
- 腎臓に持病がある方
- 糖尿病がある方
- 血圧が高い方
- 免疫疾患を持っている方
【関連記事】熱中症対策用のスポーツドリンクの味が苦手!何を飲めば予防できる?
脱水を起こしていないかのチェック項目は
【参考】高齢者の熱中症予防、脱水を防止してわずかなサインをチェックしよう
緊急受診の目安は
- 口から少しずつ水分を入れても吐いてしまう
- 水分がとれているが脱力している
- おしっこが減っている
- 皮膚や舌が乾いている
- 意識が朦朧(もうろう)としている
などの強い脱水を疑う兆候があれば、点滴で補液する必要があるので、夜間でも受診をしてください。
ただし、事前にノロウイルスの疑いがあることを受診先に連絡して指示を仰ぐこと。
院内感染を防ぐために必要なことです。
脱水さえ防ぐことができれば、徐々に症状は治まり、食事をとれるようになります。最初の水分補給が肝要です。
食事はいつから?お腹にやさしい食べものは?
発症から2~3日たつと食欲が出てきます。
でもビックリするくらい少しずつしか食べられません。
[tip]液体 → 半固体 → 消化の良い固体[/tip]「急がば回れ」式に段階を踏むことが大事です。
絶対に無理をしないこと。食事の度に嘔吐するようなら1~2食、控えてみましょう。
私が流動物を口に入れられたのは、最初の嘔吐から丸2日後でした。
プリンを半分がやっとこさ。スポーツドリンクを除くと、これがその日1日分の食事です。
そして、食後は最低でも30分、「お腹が小慣れてきたな」と思うまで安静にしましょう。
少量しか食べていないのに驚くほど消化しておらず、どーんと胃もたれするので、横になって過ごすほうがいいですよ。
最初は食べるだけで疲れます。
食事の内容は、▼こんな感じ。
- 刺激の少ないもの
- 消化のよいもの
- 電解質を多く含むもの
- あっさりとした冷たいもの(口の中で温めてから飲み込むと良い)
- 食べやすい流動的なもの
私が食べてみて、食べやすかったものをご紹介しますね。
- ウィダーインゼリー
- レトルトおかゆ(塩味がついているほうが食べやすい)
- フリーズドライおかゆ・にゅうめん
- ゼリー(あっさりしていてツルンと入りやすい)
- プリン(濃厚なので一気には食べられないかも)
- バナナ(カリウムが豊富、甘くて食べやすい)
- 菓子パン(小さいものを少しずつ)
※柑橘系は吐き気を催すもとになる場合があるのでおすすめできません。
快復してくると、おかずっぽいものも食べられるようになります。
が、やはり濃い味のもの、消化の悪いものはとても食べられません。
コンニャクが大好物なのですが、「あんなものを消化できるなんて信じられない・・・」と思うほどコンディションが変わります。
だから、おかずデビューは、あっさりした、お腹にやさしいものから。量は少なくて構いません。
小分けにして食べると、消化しやすいようで、負担にならず、少しラクでした。
- ささみ・白身魚・卵などのたんぱく質(薄味で!)
- さつまいも・かぼちゃの軟らかく炊いたもの
などが食べやすかったです。離乳食に近いかもしれませんね。
まとめ:普段からスポーツドリンクや長期保存のきく缶パンなどを常備しておくと安心
わが家はたまたまスポーツドリンクをケース買いしていたので、ずいぶん助かりました。
ウィダーインゼリーも日持ちするので、レトルトおかゆやうどんなどと一緒に買い置きしておくのもおすすめ。
多くの学校・園や病院で使われている経口補水液「OS-1」のゼリー版もあります。
また、今回わたしは、普段ほとんど食べない菓子パンが無性に食べたくなったので、災害用の缶入り菓子パンを買い置きしておけばよかったな・・・なんて思いましたよ。
スポーツドリンクを大量に消費したので、足りなくなった分はネットスーパーに配達してもらいました。
ノロウイルスは感染力が強く、家族内感染を防ぐのが難しいです。そして、前兆の来るのが最初の嘔吐のおよそ30~40分前と、急な発症が特徴。
誰も買い物に出られなくても3~5日は乗りきれるように日ごろから備えておくのが、ダメージを少なく済ませるコツだと実感しました。
ぜひ参考にしてくださいね。